はじめに
電気は、使えているうちは意識されにくく、止まって初めてその大切さに気づくものです。接地工事はさらに目立たない存在で、地中に埋めてしまえば、そこに何があるのかを見ることもできません。
それでも接地は、地絡や漏電が起きたときに電流を大地へ逃がし、感電や機器の損傷を防ぐための大切な工事です。この記事では、接地の種類と接地抵抗値の基準を整理したうえで、実際の現場で何をどう確かめているのかをご紹介します。当社の対応内容は高圧電気設備工事業のページでご紹介しています。
接地工事にはどんな種類がある?
接地工事は、電気設備の技術基準の解釈により、A種からD種までの種別に分けられています。おおまかには次のような使い分けです。
- A種:高圧・特別高圧の機器の鉄台や金属製の外箱
- B種:高圧と低圧を結ぶ変圧器の低圧側の中性点
- C種:300Vを超える低圧機器の金属製の外箱
- D種:300V以下の低圧機器の金属製の外箱
キュービクルの中には高圧側と低圧側の両方の機器が収まっているため、一つの設備の中で複数の種別が組み合わされます。系統用蓄電池のように高圧で連系する設備でも考え方は同じで、受変電の部分にはA種・B種、制御盤などの低圧機器にはC種・D種が適用されます。
接地抵抗値の基準と、測るタイミング
接地は、施工したら終わりではありません。求められる接地抵抗値を満たしているかどうかを、測定して確かめる必要があります。一般的にはC種で10Ω以下、D種で100Ω以下(低圧電路に0.5秒以内で遮断する装置がある場合は500Ω以下)とされ、A種・B種については算定式に基づく基準値が定められています。
測定には接地抵抗計を使います。新設の施工が終わったときはもちろん、定期点検のたびに測って、数値の推移を残しておくことが大切です。土の水分量によって数値は動くため、一度の値だけでなく、季節や天候も踏まえて見ていきます。
接地抵抗が基準を超えていると、どうなる?
接地抵抗が高いままでも、設備はふだんどおり動きます。照明も空調も生産設備も、何ごともなく使えます。効かなくなるのは、何かが起きたときです。
地絡や漏電が発生したとき、接地は異常な電流を大地へ逃がす役割を担っています。抵抗が高いと、この電流が十分に流れません。すると、機器の金属部分に高い電位が残ったままになり、触れた人が感電するおそれがあります。あわせて、地絡を検出して回路を切り離す保護装置が働きにくくなることもあり、事故が起きたときの被害が大きくなります。
ふだんは何も起きない。けれども、いざというときに効かない。これが接地の怖いところで、定期的に測っておく理由でもあります。
事例1:基準を超えていた既設の設備を直す
当社が施工した設備ではありませんが、電気主任技術者の方から「A種の接地抵抗が20Ωを超えている」という指摘があり、直してほしいというご依頼をいただきました。
設置された当時は、基準を満たしていたはずです。それが年月のうちに上がってきたことになります。動いている設備ではありますが、異常時に電流を逃がしきれないおそれがあるため、接地を取り直すことになりました。
敷地内にはPASが複数あり、それぞれの接地を打ち直しました。あわせて、柱の上から単独の接地を下ろしてきています。
施工後に測ると、6.76Ωまで下がりました。
現場のひとこと
接地は、抵抗値が上がっていても、設備は動き続けます。だから気づかれません。測ってみて初めて分かる、というのは接地工事の一番の特徴だと思います。
事例2:新設の現場で、接地極を5本打つまで
こちらは、特別高圧に連系するキュービクルの新設工事です。A種の接地を取るため、アスファルトを斫って接地極を打ち込みました。大型のトレーラーが出入りする場所なので、車の動きが止まる夜のうちに作業を終わらせています。
1本打っては測り、また打っては測る、という進め方になります。1本目を打った時点では21.2Ωでした。
そこからしばらくは、打ち増してもなかなか下がりませんでした。ところが4本目あたりで一気に落ち、5本目で2.00Ω。ここで打ち止めとしました。
打ち込んだ接地極に接地線をつなぎ、埋め戻して完了です。埋めてしまえば、あとから手を入れるのは簡単ではありません。
現場のひとこと
何本で基準値に入るかは、打ってみないと分かりません。土の中の様子は掘るまで見えないので、途中でなかなか下がらないと、正直なところ少し焦ります。今回は5本で収まって助かりました。
接地は、あとから直すのが大変な工事です
接地極や接地線は、基礎や舗装の下に入ってしまいます。あとから抵抗値を下げようとすると、掘り返しや斫りからやり直すことになり、手間も時間もかかります。とくに系統用蓄電池のように大型の設備では、基礎工事の段階で接地の位置を計画に組み込んでおく必要があります。
当社では、系統用蓄電池の工事で、地中への接地工事と配管の埋設を基礎工事の前に行っています。その流れは系統用蓄電池設備事業のページと、蓄電所の基礎工事の記事でご紹介しています。
年数ではなく、測った数値で判断する
新設のときに基準を満たしていても、年月がたつと接地極の腐食などで抵抗値が上がることがあります。事例1のように、点検で指摘されて初めて分かるというのは珍しくありません。
だからこそ、定期点検のたびに測って、記録を残しておくことをおすすめします。一度の数値ではなく、推移で見ておくと、上がってきているかどうかが分かります。
当社は、年数が来たから交換、という考え方はとっていません。何を直して何を残すかは、日ごろ設備を見ている電気主任技術者の判断によるところです。ただ、接地抵抗のように数値で出てくるものについては、指摘が出た時点で手を打っていただきたいと考えています。今は何も起きていなくても、効かない状態が続いているという意味では変わらないからです。
工事を依頼するときに確認しておきたいこと
接地工事は、埋めてしまえば外から確かめられません。依頼するときには、施工後の接地抵抗の測定結果を数値で示してもらえるか、記録として受け取れるかを確認しておくとよいと思います。数値が残っていれば、次の点検のときに比べることもできます。
ほかの高圧設備の工事事例は、高圧電気設備の施工実績からご覧いただけます。
お問い合わせ
「点検で接地抵抗の数値を指摘された」「既存設備の接地の状態が分からない」といったご相談でも大丈夫です。株式会社トラストでは、埼玉・千葉を拠点に全国各地で、高圧受電設備・系統用蓄電池・太陽光発電設備の接地工事に対応しています。測定結果は数値でお示しし、記録としてお渡しします。
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