はじめに
電気は、使えているうちは意識されにくく、止まって初めてその大切さに気づくものです。キュービクルや電気室の中には、PASやLBS、変圧器、コンデンサなど、役目の違う機器がいくつも並んでいますが、それぞれの機器には「替えどき」の目安があり、その年数は機器ごとに異なります。
この記事では、高圧受電設備のおもな機器について、業界団体が示している更新推奨時期の目安と、実際に交換工事を行っている電気工事会社から見た「替えどき」のポイントをまとめてご紹介します。
「更新推奨時期」とは?
更新推奨時期は、「この年数で壊れる」という意味ではありません。通常の環境で、通常の保守点検を行いながら使った場合に、部材の老朽化などから、新品に替えたほうが経済性も含めて一般的に有利と考えられる時期を示したものです。メーカーが性能を保証する年数とも異なります。
高圧機器については一般社団法人日本電機工業会(JEMA)、高圧ケーブルについては一般社団法人日本電線工業会が、それぞれ目安を示しています。以下では、この目安をもとに機器ごとのポイントを見ていきます。なお、示される年数は資料や団体によって幅があるため、ここでの年数もあくまで目安としてご覧ください。
機器別の更新目安と、交換工事のポイント
PAS(柱上高圧気中開閉器)
PASは、電力会社の配電線から電気を引き込む入口に設けられる開閉器で、構内で事故が起きたときに電力会社側へ影響を広げないための大切な役目を担っています。屋外に設置される高圧交流負荷開閉器として、更新推奨時期は10年、または負荷電流の開閉回数200回とされています。あわせて、地絡継電装置付き(GR付き)の開閉器の制御装置は、使用開始後10年が目安です。
電気屋の目線
PASは、ほかの機器に比べると交換の段取りが組みやすく、停電の時間も比較的短く済む機器です。ただ、引き込みの入口にあるため、ここが故障すると建物の電気がまとめて止まってしまいます。屋外で雨風や雷にさらされる機器なので、年数がたったものは早めの交換をおすすめしています。
高圧ケーブル(CV・CVT)
高圧ケーブルは、PASからキュービクルや電気室までの電気を運ぶケーブルです。日本電線工業会の資料では、高圧CVケーブルの更新推奨時期の目安を、屋内や水の影響がない屋外で20年~30年、地中の管路や屋外ピットなど水の影響がある場所では10年~20年としています。水の影響を受ける場所ほど劣化が進みやすいため、目安の年数も短くなっています。
電気屋の目線
高圧ケーブルは、地中や建物の中を通っていて、外から傷みを見ることがほとんどできません。そのため、年数に加えて、絶縁抵抗の測定や耐圧試験の結果を見ながら判断していくことになります。PASと同じく、ほかの機器に比べると交換の段取りは組みやすい部類です。
LBS(高圧交流負荷開閉器)・DS(断路器)
LBSは、電気が流れている状態でも回路を開け閉めできる機器で、ヒューズと組み合わせて変圧器やコンデンサを守ります。更新推奨時期は、屋内用で15年、屋外用で10年、または負荷電流の開閉回数200回です。組み合わせて使う高圧限流ヒューズも、屋内用15年、屋外用10年が目安です。DSは、点検や工事のときに回路を切り離すための機器で、手動操作のもので20年、または操作回数1,000回が目安とされています。
電気屋の目線
長く使われてきた設備でLBSやDSを交換すると、新しい機器と既設の機器で大きさや取付穴の位置が大きく違っていることがよくあります。取付位置をずらしたり、骨組みにアングルを足して加工したり、配線の取り回しを変えたりと、現地での調整が欠かせません。長年の固着でボルトやナットがなかなか外れないこともあり、年数がたつほど交換の手間は増えていきます。
変圧器(トランス)
変圧器は、高圧の電気を建物で使える低い電圧に変える機器で、高圧配電用変圧器の更新推奨時期は20年とされています。ほかの機器より目安の年数は長めですが、そのぶん長く使われている設備も多い機器です。
電気屋の目線
変圧器は大きく重い機器なので、交換では搬出入の経路や方法から考える必要があります。また、省エネ性能の高い新しい機種は、以前のものと大きさが変わることがあり、架台に取付穴をあけ直すといった加工が必要になる場合もあります。PASやケーブルに比べると、故障してからの復旧には時間がかかりやすい機器なので、計画的な更新をおすすめしています。
高圧進相コンデンサ・直列リアクトル
高圧進相コンデンサは、電気を効率よく使えるようにする(力率を改善する)機器で、直列リアクトルはコンデンサと組み合わせて使われます。更新推奨時期は、どちらも15年とされています。
電気屋の目線
コンデンサを交換するときは、端子の締め付けトルクにとくに注意しています。機器には締め付けトルクの値が表示されていて、その値が思っているより弱めです。いつもの感覚ではなく、必ずトルクレンチで表示どおりに締めることが大切です。
そのほかの機器
ここで取り上げた機器のほかにも、交流遮断器(VCB)は20年または規定の開閉回数、保護継電器・計器用変成器・避雷器はそれぞれ15年が、更新推奨時期の目安とされています。
更新推奨時期の早見表
| 機器 | 更新推奨時期の目安 |
|---|---|
| PAS(屋外用の高圧交流負荷開閉器) | 10年または負荷電流開閉回数200回(GR付きの制御装置は10年) |
| LBS(高圧交流負荷開閉器) | 屋内用15年、屋外用10年、または負荷電流開閉回数200回 |
| 高圧限流ヒューズ | 屋内用15年、屋外用10年 |
| DS(断路器・手動操作) | 20年または操作回数1,000回 |
| 交流遮断器(VCB) | 20年または規定開閉回数 |
| 高圧配電用変圧器 | 20年 |
| 高圧進相コンデンサ・直列リアクトル | 15年 |
| 保護継電器・計器用変成器・避雷器 | 15年 |
| 高圧CVケーブル | 屋内・水の影響がない屋外:20年~30年/水の影響がある場所:10年~20年 |
目安の年数を過ぎたら、すぐに替えないといけない?
目安の年数を過ぎたからといって、すぐに使えなくなるわけではありません。実際の劣化の進み方は、設置されている環境や使い方、日頃の点検の状況によって大きく変わります。反対に、海に近い塩害地域のように、年数がたっていなくても環境によって早く劣化が進む場所もあります。
実際の現場を見ていても、目安の年数を大きく超えて使われている設備は珍しくありません。たとえばPASは屋外用の開閉器として10年が目安とされていますが、10年きっかりで交換される現場はほとんどなく、20年近く使われていることもあります。示される年数も資料によって幅があり、電気保安協会の資料では、LBSを20年、断路器を25年といった目安で案内している例もあります。
どの機器をいつ替えるかの最終的な判断は、設備の点検を担当している電気主任技術者の方の見立てが基本になります。当社はその判断をもとに、実際の工事の立場から、停電の時間をどう短くするか、搬出入をどう進めるか、既設の設備にどう納めるかといった段取りをご提案しています。
電気屋の目線
機器の更新はお金のかかることなので、年数が来たからといって無理に交換する必要はない、というのが現場で工事をしている立場からの正直な意見です。工場や施設の規模、電気が止まったときの影響の大きさによっても、急ぐべきかどうかは変わります。ただ、10年、15年、20年といった節目では、電気主任技術者の方に一度相談しておくことをおすすめします。PASにかぎらず、ほかの機器も同じです。高いものだからこそ、使えるものは使う。でも、だめなものは替える。それが基本だと考えています。
早めの計画が、停電の時間を短くします
受変電設備の機器は、同じ時期に設置されていることが多く、いくつもの機器が同じ頃に替えどきを迎えます。故障してから一つずつ対応するより、年数の近い機器をまとめて計画的に更新したほうが、停電の回数や時間を抑えやすくなります。電気は止まってから慌てるより、使えているうちに備えておくほうが、影響を小さく抑えられます。
当社がこれまでに行った交換工事の事例は、高圧電気設備の施工実績や、各機器のコラムでもご紹介しています。当社の高圧電気設備工事の対応内容は、高圧電気設備工事業のページをご覧ください。
お問い合わせ
「設備の機器がいつ頃のものか分からない」「更新の計画を立てたいが、どこから手をつければいいか相談したい」といった段階でも大丈夫です。株式会社トラストでは、埼玉・千葉を拠点に全国各地で、高圧受電設備の新設から更新・改修工事、各種試験まで対応しています。現地で設備の状況を確認し、更新の進め方をご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。
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